WORKBOOK ON BOOKS 4-- BOOK DESIGN 2002
装丁の仕事132人 
日本図書設計家協会編 玄光社MOOK


特集:この仕事/本の顔のつくりかた……柳川貴代


様々な断片が結晶化する一冊の本。


≪伝説の作家≫山尾悠子の小説32篇が二十年 ぶりに纏められた−−。

心待ちにしていた読 者も多く、各誌で書評や装丁についての

文章が載り、 とても幸福な仕事であった。

この本のように二十年間眠りについていた原稿や

十五年間も研究された原稿の時間を想うと

装丁に与えられる時間は大変短いものである。

著者・訳者・編集者の様々な思いを短時 間で読み取り、

目に見える形=デザインとし て提示しなければならない。

常に深淵に臨む 気持ちである。時間内に校正中の原稿と

著訳者の他の本を新刊・古書問わず読み、

残る言葉から図像やオブジェを探し求める。

だがそ れらの作業がデザインに現れるのは稀であり、

また囚われ過ぎてもいけないのだ。情報は取捨選択され

方向性の磁鉄鉱となるのみなのである。

『山尾悠子作品集成』は様々な断片が 結晶化した

硬質な幻想文学の作品群であるが、

一冊の書籍として形成されるまでの過程もまた、

鉱物の結晶化に似た様相であった。