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#03
スフィンクス・ブックボックス】1 「形の全自然学」
ランスロット・L.ホワイト編 斉藤栄一訳 工作舎刊
ポスト・ゲシュタルト---ゲーテ自然学の水脈………西山孝司
Part1
◎レオナルド・ダ・ヴィンチは「万能の天才」であっただろうか。
否、レオナルドは探求者であった。 (それも特別なパワーを持った)
レオナルドは観察し、記述した。並はずれた天分で。
そこには芸術と科学の垣根などあったはずはない。
もとをただせば、芸術も科学も共にひとつの人間的衝動から発したものである。
◎ 本書は生物の形態に数学的分析を導入したダーシー・トムソンと
その著書『成長と形態』を記念したシンポジウムであり、
物理学・生物学・美学・心理学などの分野から、 集まった参加者によって、
1950年に開かれた形態をめぐる一大イベントの記録である。
◎ デモクリトスの原子論とプラトン=アリストテレスの形態論という
二つの自然学を統合し、 外的世界と内的世界、そこに存在する形態の重要性を理解し、
自然に統計的諸法則を探ろうとする試みである。
決して明快な結論が提示される訳ではないが、全体学への発火点となった本書は、
今なお、問うべき問題点を孕み、その火を消すことのない、魅惑的な書である。
◎ 結晶学のハンフリーズ・オーエンは「眼に見える形態を解釈するという事は、
熱運動を平均化して考えることにほかならない」という。
実際、原子レヴェルの世界では、我々が通常用いる形態という 概念では通
用しない。
物理学者はそれを構造(オーガニゼーション)という概念に、
さらに事象(イベント)へと概念を変化させていく。
例えば科学雑誌などで見る巨大なタンパク質の分子模型など、
あのようなものが極小になって身体の中に入っているわけではないので、
あれは、事象ー構造ー形態と前述とは逆のルートで目に見えるようにしたものであろう。
重要なのは、そこに人間のイマジネーションが介在しているのだという事である。
◎ ………Part2へ続く